uctripperライブの情報を見つけ、三崎港「貝がらホール」に行った。私の住んでいる場所からは2時間くらいかかり開演間際になってしまった。入り口で「久しぶり」と握手をして、話もそこそこに演奏会が始まった。
実は、付き合いは古いが演奏を聴くのはその日が初めてだった。彼のピアノはとても叙情的でメロディが美しかった。聴く人の全身を柔らかな空気に包んでゆっくりと進んで行くように音楽は始まりやがて風がうねり、逆巻き、荒々しく泡立つがそれもいつまでも続く事はなく嵐は治まり、おだやかな光が辺りを照らし、またどこからともなく新しい風が生まれてくる。
uctripperは言った。私の音楽には譜面はない。ジプシーや放浪詩人の如く放たれた音は風に乗り流れ、同じ音は二度とない。
演奏を聴いている時は分からなかったが。今、この文章を書きながら、思い当たる事がある。それは、彼と、シーカヤックの関係だ。包み込んで、緩やかな、絶え間ない。この音の流れはパドリングするシーカヤックのリズムではないかと。風と波とひとつになりカヤックを操るその呼吸、リズムが正にuctripperの音楽ではないか、そんなふうに思うに至った。
もう少し聴いていたかった。
「今度コーヒー飲みましょう。」とuctripper氏「ぜひ。」と私。そう言って会場を出、バス停に向かった。日は落ちたが空には光が残り、港と海は影になり黒く横たわっている。来た時よりも気温は明らかに10月のそれになっていた。
マサノブ
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